戦中戦後に起こった古美術の大異動期に、「中世禅林の墨蹟と水墨画」を積極的に収集した二大コレクターがいた。東は菅原通済(1894-1981)、鎌倉の常盤山文庫創設者、西は正木孝之(1895-1985)、のちの正木美術館創設者である。ふたりは互いに、名品を収集したよきライバル同士。通済のコレクションの中でも、室町時代に奈良.西大寺で什物として使われていた「重要文化財根来輪花天目盆」の鮮やかな朱は、雄弁に中世の美を物語っている。この根来塗の名盆が縁結びとなって、ふたりの目利きを魅了した禅文化による名品たちが、正木美術館を舞台に朱と墨のハーモニーを奏でる。そして、開館以来40年、蔵品だけで、展示を行って来た正木美術館にとっては、初めての試みとなる。
通済を継いだ息子は、根津美術館前名誉館長の菅原壽雄。「オイお前、関西にスゲーヤツが居るナア。」と通済は壽雄に興奮気味に語ったという。正木美術館での今回の展覧会には、昨年亡くなった菅原壽雄氏への追悼の意も込められている。
正木美術館は、創設者・正木孝之(滴凍・てきとう、1895〜1958)が多年にわたり収集した東洋美術品と、土地建物の寄付によって、昭和43年11月に一般公開された。収蔵品の数は、国宝3点、重要文化財12点を含む1200点を数え、東洋古美術の多彩な分野におよぶ。なかでも、鎌倉、室町時代の水墨画、墨蹟の名品群は、わが国の中世禅宗社会の文化遺産として高く評価され、《中世禅林文化の宝庫》として親しまれている。また、利休62歳の寿像「千利休図」を始めとし、茶道具の美の領域も魅力の一つ。
近年は、現代作家・須田悦弘の作品が加わり、中世の美を未来へと継承する試みにも力を注いでいる。
昭和18年(1943)、常盤山文庫は鎌倉の地に実業家の菅原通済(すがわらつうさい)氏によって創始された。そのおもな収蔵作品は、禅僧の書である墨蹟、水墨画、古筆、工芸品などで構成されるとともに、通濟氏の父恒覧氏が収集を始めた菅原姓にちなんだ天神さまの美術作品を収蔵していることもひとつの特色である。またこれらの収蔵作品には、国宝2件、重要文化財23件が含まれる。現在は公開されてはいない。
創設者・正木孝之が昭和25年に建てた正木邸の広間を会場にして行います。
正木コレクションゆかりの場でごゆっくりとおたのしみください。
- 「朱の魅力-根来の美-」
講師:西田宏子(根津美術館副館長)
日時:10月11日(日)14:00〜
- 「墨の魅力-国宝・毘風巻をむかえて-」
講師:高橋範子(正木美術館主席学芸員)
日時:10月31日(土)14:00〜
- 第二回 館長・正木久彦 茶会「苫屋の秋」
日時:10月18日(日)
(1)10:00 (2)11:00 (3)13:00 (4)14:00
日時:11月15日(日)
(1)10:00 (2)11:00 (3)13:00 (4)14:00
参加費:1,500円 各席15名
- 第二回 卓話「床の間の一幅を愛でながら」
講師:高橋範子(正木美術館主席学芸員)
日時:11月7日(土)14:00〜
- ワークショップ「ねり香づくり」
講師:山田松香木店
日時:11月21日(土)
(1)13:00 (2)15:00
参加費:1,500円 各席20名
- 学芸員によるギャラリートーク
日時:10月24日(土)/11月3日(祝・火)/
11月21日(土)いずれも11:00より(1時間程度)
- 呈茶(お茶と季節のお菓子)
時間:11:00〜15:30
お一人様:500円
※但し、イベントのある日はお休みさせて頂きます。
事前申請プログラムの申し込みはいずれも、メールか、往復ハガキで、希望の催し物名と開催日、住所、氏名、年齢を明記ください。定員になり次第、締め切らせていただきます。
正木美術館
〒595-0812 大阪府泉北郡忠岡町忠岡中2-9-26
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