古来より日本では、自然のあらゆるものに神性を見出し、畏怖と敬意の念を抱きながら信仰してきました。6世紀になり仏教が正式に伝わると、わが国の社会と文化に大きな影響を与えながら広く浸透します。そして、それまでの神々への崇敬とも互いに影響しあいながら、次第に独自の信仰の世界をつくりあげていきます。
当館の平成29年度の秋季展は館蔵作品の中から、神と仏への信仰にまつわる作品を中心に約50点を展示いたします。「梵字文殊図」(景徐周麟賛、室町時代)や「半跏思惟像」(飛鳥時代)などの仏の姿を表現した作品や、神仏習合思想に根ざして描かれた「春日社寺曼荼羅」(鎌倉時代)、密教の尊格を描いた「不動明王図」(妙澤筆、鎌倉時代)のほかに、社寺より伝わった什宝や、古代の信仰の中でつくられた埴輪などをあわせてご紹介いたします。各時代の人々が信仰の中でかたちづくった作品をご堪能いただければ幸いです。