花鳥画と聞いて一般的に想起されるイメージは、華やかな、愛らしい、色とりどりの世界です。しかしその始まりを辿ると、14世紀中ごろの中国において描かれた、モノクロの水墨画作品に行きつきます。墨の濃淡によって巧みに表現されるこれらの花鳥画は、禅の思想を反映しながら制作され、日本に伝えられて以降は、中世水墨画において花開きました。
令和5年度の春季展示は、当館の中世禅林美術コレクションの中から、花鳥をテーマとした多様な作品をご紹介いたします。花鳥画には、万花に先駆けて花をつけることから高潔な精神を象徴する梅、字の音が通じることから立身出世のイメージを伴う鷺、武人の武威を示す鷹など、吉祥性や寓意が込められた様々な作品が見られます。花鳥の意匠が施された中国工芸品の数々と共にご鑑賞ください。
また、本年は尾形乾山(1663~1743)の生誕360年にあたります。これを記念して当館の乾山作品の中から、春の野山を描いた「扇面春山草花図」と、四季の和歌と絵付が施された「絵付向付」も展示いたします。
うららかな春の一日、正木美術館の多彩な花鳥作品との出会いをお楽しみいただけましたら幸いです。