正木美術館は創設者正木孝之(1895〜1985)が昭和43年(1968)11月に開館し、今秋で50周年を迎えます。孝之は作品を蒐集する中で東洋古美術の世界に魅せられ、日本の中世水墨画や墨蹟、茶道具などの蒐集に情熱を注ぎ、生涯をかけて正木コレクションをつくりあげました。
本展では開館50周年を記念し、国宝3件と重要文化財13件をはじめとした当館が誇る名品の数々を3期に分けてご紹介します。
第1期悠久の時を歩む仏教美術
仏教は長い歴史の中で様々な文化を生み出し、多くの価値ある仏教美術作品を伝えています。仏教において智慧を象徴する菩薩を描いた≪重文≫「騎獅文殊図(きしもんじゅず)」(虎関師錬賛)をはじめ、達磨大師の法脈を嗣ぐ禅宗の大成者を描いた≪重文≫「六祖慧能図(ろくそえのうず)」(無学祖元賛)、臨済宗大徳寺派の風狂の僧を描いた「一休宗純と森女図」(一休宗純賛)など、正木コレクションで展開する信仰の世界をどうぞご高覧ください。
第2期書を楽しむ、花鳥を愛でる
日本の書は中国の書芸術を積極的に受容しながら育まれ、柔らかな和様の世界を展開してきました。日本独自の様式をつくりあげた花鳥画も、中国絵画に大いに学びつつ日本人の感性の中で捉えなおされたものといえます。平安の三蹟として知られる小野道風と藤原行成による二つの国宝の白氏詩巻、静謐(せいひつ)な雰囲気をたたえた≪重文≫「墨梅図(ぼくばいず)」(絶海中津賛)をはじめとする花鳥画など、詩情あふれる優品を展示します。
第3期禅と茶が心を繋ぐ世界
禅は言葉や文字に頼らず師から弟子の心へ直接仏の教えを伝えることを教義としています。日本の社会や芸術文化に大きな影響を与えた茶の湯も、禅の教えを重視しながら研ぎ澄まされた精神世界を築き上げました。≪国宝≫「大燈国師墨蹟 渓林偈・南嶽偈」、≪重文≫「山水図(さんすいず)」(拙宗(雪舟)筆)といった禅林で生み出された作品、≪重文≫「千利休像(せんのりきゅうぞう)」(古渓宗陳賛)や孝之遺愛の茶道具など佳品をお楽しみください。