第1部 請来絵画と古陶

主な作品U 水墨画から墨蹟へ
竺田悟心(じくでんごしん)墨蹟「中巌円月(ちゅうがんえんげつ)送別の偈」(重要文化財)

竺田悟心墨蹟「中巌円月送別の偈」

孝之は水墨画の他に、墨蹟も多く収集していました。その数70点余り。他のコレクターは墨蹟を茶道具として床に掛けるために収集していましたが、孝之は純粋に書として集めていました。菅原壽雄氏は、その墨蹟コレクションの特徴として、水墨画に書かれる賛文から書としての墨蹟に興味を持ったのではないかと推定されています。
本墨蹟は、わが国からの留学僧・中巌円月に、中国・元時代の禅宗高僧・竺田悟心から送別に与えられました。
「一片の身心、放下(ほうげ)して休せん」
小さき一片の自己の身心を投げ捨てて、計らいをやめ安らかに、あるがままに生きよ、と老僧は日本からの若き参禅僧に戒めと励ましの言葉を与えたのです。
その書風は宋末元初の大家趙孟頫に通じます。墨の艶、弾力のある線から、溌剌とした老僧の気概を感じさせます。


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