第3部 水墨画と漆芸

主な作品T重要文化財
拙宗(雪舟)筆 溌墨山水図(室町時代)

「拙宗」という印章を捺された作品がある。拙宗は読むと「せっしゅう」となる。あの室町水墨画の巨匠、雪舟と音通する。正木孝之がこの作品を手に入れた当時、この拙宗と雪舟が同人かどうか議論されていた。彼はこの作品が雪舟によるものと信じて疑わなかった。
黒々とした墨面で輪郭線を用いずに山水を表現する。手前の岩は墨をぶつけたような表現である。他のモチーフもそれぞれ力強く描かれており、絵師の溌剌とした気力を感じさせる。随所にみられる荒々しさは、雪舟の描く作品に通じる。
後年、この作品は雪舟真筆であると認められる。彼は、雪舟という名を使う前に拙宗と名乗っていたのである。正木孝之の没後半年して、雪舟の若き日を偲ぶ貴重な作品であることから、重要文化財に指定された。彼の眼が正しかったことが証明された。


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